芸哲宗のブログ

クリエーションが好きなだけでクリエーター

「ソール・ライターのすべて」に触れる

ソール・ライターのすべて

ソール・ライターに出会ったのはそんなに

昔の話ではありせん。

青幻舎は、日本初の写真集

「ソール・ライターのすべて」を2017年に

刊行しました。

 

本当に、偶然手に取って、写真集にしては

小さくて、安価で、とても良い紙とは

いえない体裁。

 

「なんだコレ!?」が第一印象でした。

 

しかし、なんともいえない庶民的なその

写真集を持って、

気づいたらレジに並んでいた、そんな感じの

出会いでした。

 

なぜ気に入ったのかというと、

〝日常〟の切り抜きだったからです。

 

あまりにも簡単な日常が完全なる個性で

クローズアップされているのです。

 

大自然の絶景やインチキめいた都会の

建造物ではなく、なんてことない、

現実の日常生活の中の一瞬を非現実に

切り抜いているその健気さに共振して

しまいました。

 

その後、19刷を重ねるロングセラーとなり、

欧米およびアジア圏の国で刊行されるなど

注目を集めたのです。

 

この写真集の解説はググれば沢山出てくるので、わざわざ語るまでもありません。

さて、

“アート”というものは特に日本人の場合、

子供時代を過ぎれば自然と目の前から

少しづつ消えていきます。

 

ほとんどの場合、環境にそのように

〝変えられて〟しまうのです。

 

ほぼ、価値観というものは「偏差値」に集約され、

その価値観にのっとった狭い領域で勝負を

強いられるわけです。

 

芸術・哲学・倫理などというものは、

実際に就職して、社会に出てから役立つ

科目なのかというとそうでもありません。

 

別に知らなくてもよい存在だと思われがちです。

 

しかし、2022年の現在、世界の問題に

疑問を感じている人が多いことも事実です。

 

日々の日常生活の中にうるおいを見出し、

自らの頭で考え、既存の価値観に疑問を

持ち始めた時、芸術・哲学・倫理の吐息が

聴こえ始めます。

 

「私が写真を撮るのは自宅の周辺だ。

神秘的なことは馴染み深い場所で起きる

と思っている。

なにも、世界の裏側まで行く必要はないんだ。」

 

ソール・ライターのこんな言葉から、

不思議な勇気をもらえます。

 

「写真はしばしば重要な瞬間を切り取るもの

として扱われたりするが、本当は終わることの

ない世界の小さな断片と思い出なのだ。」

 

ハッとする気づきもあります。

 

「私は無視されることに自分の人生を費やした。

それで、とても幸福だった。無視されることは

偉大な特権である。」

 

変なつながりよりも、自己の対話することで

大いなるものとつながるきっかけを

創ったりします。

 

気取らず飾らず、誰かに見せよう、聞かせよう・・・

ましてや説き伏せようなどとは全く考えていない

ソール・ライター。

 

ピュアでシンプルな言葉だからこそ、

私たちの心にダイレクトに鳴り渡るのです。

 

「世界は他人への期待で満ちている。

期待を無視する勇気があれば、面倒を楽しむこともできる」

 

何とも、深く、含蓄のある言葉ではないでしょうか。

 

今日も、「ソール・ライターのすべて」を

片手にベッドに入って、

この世界観を今日も楽しんで眠ることにします。